《所 信》
1985年に建築設計事務所を起こしてから40年になります。
今更ですが、Mac建築デザイン研究所の意味を少しだけお話しさせてください。
Mはマネージメント。aはアーキテクト。cはコンフォート。
Macは「お金のこともちゃんと考えて居心地の良い建物を創る」となります。
そしてデザインは「目に見えない部分をデザインする」ことを意味します。
ですから弊社は《外断熱》《防音》《足音対策》《音響》などを追求してきました。
そしてこれからは、今までに培ったノウハウを生かして、ほんとうに世の中の役に立つ建物だけを設計していきたく思います。
《入居者が一番困っているのは騒音》

これは、Alba Link 不動産総研さんが行ったアンケートのひとつですが、マンション住まいの人のなんと80%ちかくの人が騒音に悩んだことがあると仰ってます。
内訳は「足音が響くがトップ」で、第二位は「声がうるさい」です。
・上の階に住む子どものドタドタ音が深夜まで続くことに悩んでいる
(20代 女性)
・子どもたちが寝る時間に、上の階でサッカーをしているような足音
が響き、体調が悪いときなどはイライラします(30代 女性)
・上の階に住んでいる人の足音がドスドスと非常にうるさく、夜中に
動かれるとビックリして起きるくらいでした(50代 男性)

うるさい声に悩む住民さんの声
・電話での話し声がとても大きいこと(20代 女性)
・隣の住人がよく夫婦ゲンカをしていて、夜中寝られないこと
がよくあった(30代 男性)
・真下の家にいる子どもの夜泣きがひどくて、飛び起きるほど
でした。赤ちゃんではなく幼児だったので、声も大きくて
参りました(50代 女性)
《騒音で困った人はどんな対処をしているのか?》

・騒音を出している人に直接注意するのではなく、「管理人・
管理会社」などを通して対策してもらう人が多数。
・騒音を出している人に直接注意すると、住人同士のトラブル
になりかねません。
・また相手がどんな人かわからないと「怖い」という気持ちも
ありますよね。
・諦めの気持ちからか、「我慢」「耳栓で対策」「窓を閉める」
など、騒音の元への働きかけはしない人も多くなっていま
す。
騒音に怯えながら生活する・・・
日本国憲法が定められてから80年にもなり、飽食の時代と言われて久しいですが、こんなことで「健康で文化的な最低限度の生活」を全うできていると言えるのでしょうか?
私は日本国民として、建築士として、もう少しまともなマンションを造る義務がある!と痛感しました。
《騒音を出さないために気を付けていること》
足音や大きな声に悩んでいる人の気持ちはいたいほどわかりました。
では、マンションの住民は騒音出し放題な生活をしているのでしょうか?

・家事する時間帯を決める。20時までには「お風呂」「洗濯」
「掃除」を終わらせます(20代 女性)
・大きな音を立ててしまうかもしれないことは、日中に済ませ
る(40代 男性)
・夜中に洗濯をしたり大きな物音を立てたりしない(50代 女
性)
・仕事で夜遅くなる人は「休日にまとめて家事をする」「帰り
が深夜になった日は、翌朝お風呂に入る」といった対策を
していました。
涙ぐましい気の遣いようですね。マンション暮らしをする人たちが愛おしくなってきました。
マンションは集合住宅だから、お互いに節度のある生活をすることは大事だと思いますが、赤ちゃんが夜泣きするのはどうしようもないことです。
赤ちゃんは泣くのが仕事であり、なにも悪いことをしてないわけですし、だれだって生まれた時は赤ちゃんだったわけです。
でも母さんはよそ様に迷惑をかけているので気が気でない。夜は眠れないし、朝になったらご近所に冷たい目で見られる。
時にはもろに苦情を言われる。
「なんで私がこんな目に合わないといけないんだろう?」と思える人はまだ強いほうで、おとなしい人はウツになることも珍しくありません。
少子高齢化の要因は収入不足だけではないはずです。
のびのびと子育てをすることが許されない住環境、もっと言うと欠陥マンションが原因だと思います。
《だれも、建物のせいだと思っていないのが不思議》
これらのアンケートを読ませていただいて私が不思議に思ったことは、「私たちが騒音で悩まされているのは建物が悪いからだ!」という回答がひとつもなかったことです。
アンケートから見えてくるのは、騒音を出さないように気を遣って、自らの生活に制限を加えているけなげな住民さんたちです。
にもかかわらず夜に安心して眠ることすら許されない哀れな住民さんたちです。
同じ人がある時は加害者になり、ある時は被害者になる構図。(言葉が不適当ですみません)
ふつうに生活しているだけなのに、ふつうに暮らしたいと思っているだけなのに、それすら与えられないっておかしくないですか?
もしアンケートに、「騒音で悩まされるのは建物がしっかりしていないからだと思いますか?」という問いがあったら、
「そうだ! そのとおり!」と回答する人もいらっしゃると思います。
ところがアンケートを作成する側も、不動産屋さんも、管理事務所も、弁護士さんも、誰もそのことに気付いていないようです。
《なぜ今まで、まともな防音マンションがなかったのか?》
なぜ今まで、まともな防音マンションがなかったのか? 私なりに整理してみました。
① 「人は見た目が9割」と言うが、やはり「マンションも見た目が9割」
② どんな対策をするとどれだけ防音できるか建築士は分からない。
③ 建築物理学者は壁の防音性と床の防振性(足音対策)についてはわかるが、建築そのものがまったく分からない。
④ 建築士も建築物理もプライドが高すぎて上手にコラボできない。だから完成までいきつかない。
⑤ その結果、防音や防振(足音対策)に関する情報が極端に少ない。
⑥ ネットをググると間違った記事を平気ででてくる。
⑦ 国交省などの役人は自分の手柄を立てることと保身がすべてであり、庶民の暮らしなど考えていない。
⑧ 建材や設備メーカーは「省エネ」という大義名分を利用して国交省などに補助金を出させる。
⑨ 防音の建材と工法はメーカーのシステム商品ではないので、メーカーは国に補助金を要求しない。
⑩ 国民は、省エネなど財布に直結することに興味を示すが、意外なことに「心身の健康」に興味が薄い
《そこで、私はどうしたか?》
私は建築士ですが、建築学と建築基準法と建築業界で積んだ経験だけでは、まともな家づくりは不可能と確信しています。
それに至ったのは1999年からずっと外断熱に取りくんできたからです。
外断熱の目的は省エネだと思われがちですが、違います。
外断熱の目的は人が生きるための負荷を小さくして健康を保ち、頭の回転と作業効率を高めるためのものです。
省エネも付いてきますが、それはあくまでオマケです。
なぜ私がそこまで分かったかというと、建築物理学者なのに気さくな方と出会ったからです。
そして私のクライアントに医師が多かったからです。
建築物理学者と医学博士と建築士のコラボだったからこそ解明できたことが多くあります。
