優しい暖かさを、楽しむ。

モアナ・サーフライダーのオープンエアラウンジ

ハワイの一流ホテルのカフェは、まちがいなくオープンエアです。

なぜならそのほうが気持ちが良いからです。

ハワイの優しい暖かさを楽しむのです。

 

ガラスで囲ってエアコンで冷やすのは簡単ですが、それは 「体を強引に冷やす行為」 であり、そんなことをしても人間の体は喜びません。

暑すぎるよりマシというレベルであり、ときには冷房病になります。

 

日本にも形だけ真似したオープンエアのカフェはたくさんありますが、気持ち良いのは5月と10月だけです。

 では、 「ハワイの夏は、東京とくらべてずいぶん気温が低いのか?」 というと、そうでもありません。

ならば 「湿度がたいへん低いのか?」 というと、大きくかわりません。


ホノルルと東京の気温

 

では・・・いったい何が違うのでしょうか?

いろいろ探してみると、歴然とした違いが 2つ ありました。 

 

 

風が街ごと冷却する


ハワイでは貿易風に加えて海風と陸風が毎日吹いています。

風速は秒速6mくらいです。これを時速になおすと22kmになります。

これはちょうど自転車で快走しているときのスピードであり、とても気持ち良いです。

 


ホノルルの風速


この風は、風通しの良い (ビルとビルの間が広く開いている) ホノルルの街を吹き抜けます。

風は、日射で加熱されたビルや道路を冷却してくれます。 

すこし専門的な表現になりますが、これはホノルルの都市計画が上手なのです。

つまり、1ブロックを大きくとって高層ビルを建てて、ビルとビルの空間を広くとるように誘導しているのです。

 

改めてホノルルの街並みをご覧ください。

それに比べて日本の街並みはチマチマした敷地が多く、敷地いっぱいに家を建てるので風が通り抜けることができません。

気象台によると、東京の風速はホノルルの半分くらいですが、実際に街中ではほとんど風が通りません。

 

ホノルルで上記の都市計画を可能にした理由のひとつは太陽高度です。

ホノルルは北緯18度で、日本よりも17度南にあります。

日本の冬至の太陽高度は正午で31℃しかありません。三角定規を使って30℃を想像するとけっこう低い角度です。

 

 

しかも、日本の冬の気温はすこぶる低く、日照時間も僅かなので、都市計画で高さを厳しく制限しいます。

「自分の家の北側の家に日陰を与えないように・・・」

高さ制限が厳しいので、背の低い建物を敷地いっぱいに建てざるを得ず、風通しが悪い街並みになります。

 

その点ホノルルの太陽高度は、真冬の正午で48℃あります。 48℃は見上げるとけっこう高い角度です。

しかもホノルルは温かいので 「日照権!」 と怒る人も少ないはずです。(そのかわり、眺望権がしっかりしています) 

この、北緯18度という位置が微妙に暖かくて暑くない。奇跡の緯度なんです。

 

話が長くなりましたが、適度な風が街を冷却すると、どんな良いことが起こるのでしょうか?

簡単に言うと、照り返しの暑さがないということ。

「へえ~、そうなの・・・」 と、軽く流されそうだですが、道路面やビルからの照り返しは、想像以上に暑いのです。

逆に言うと、照り返しさえなければ少々日射が強くてもそれほど暑く感じないのです。

 

その根拠は後ほど詳しく説明します。

微妙に低い湿度


さきほど、「湿度はホノルルも東京も大差ない」 と言いましたが、実は僅かな差が 「暑さを楽しめるか、苦しむか」 を左右することになります。

 


出典:チリウヒーターHP


この図は、名古屋近郊の8月の気温と湿度を実測すると同時に、人間が 「どう感じるか」 を記録したものです。

人間が 「どう感じるか?」 を示したグラフは稀であり、作者の勇気に感謝いたします。

ここで大切なのは 「絶対湿度」 であり、絶対湿度16g/kgがハワイの快適ゾーンです。

ちなみに(重量)絶対湿度とは、空気1kgあたりに水分が何グラム混合されているかという意味です。(1kgの空気の体積は約0.83立方メートル)

 

下の表は、東京の8月の気温と相対湿度を示したものです。

赤で☓をした日は論外に蒸し暑く、検討の余地なし。

 

 

きみどり色で丸をつけた日はとてもすごしやすいです。 もし、床・壁・天井の温度が27℃程度であれば、ハワイ並です。

ところが日本のビルの外壁は、日射 (太陽からの赤外線) で焼かれて、35℃くらいになっています。 

ちなみにハワイのビルはホワイトに塗られていて日射熱を吸収しにくいことと、海風と山風 (6m/秒) が冷却してくれるので、

コンクリートの温度はそれほど上がっていません。

 

トップの写真のようにハワイのオープンエア空間は日射が直撃せずに、風通しも良いのでベストなコンディションになります。

 

ところが日本では景観条例などで、建物はグレー系かベージュ系に制約されているので、日射によって外壁や屋根が熱くなっています。

しかも、日本の市街地ではそよ風は吹きません。 

(もともと風速が2m/秒程度であることと、細分化された敷地にめいっぱいビルを建てるので風通しが悪い)

逆に、大都会では 「ビル風」 がヒュ~ヒュ~吹いて、まったく楽しめる要素はありません。(ビルとビルの隙間が狭すぎる)

 

一方、ホノルルでは露点温度22程度の日が多く、これを絶対湿度になおすと16.7g/kgDAとなります。

だからほぼ毎日、花丸がつきます。 

 

 

ホノルルの露点温度は23℃以下であり、絶対湿度になおすと18g/kg以下である

 

ここでもう一度、東京の8月の下旬の気候を見てみましょう。

あれほど暑かった夏も、9月が近づくと気温はだんだん下がってきます。

「だいぶ過ごしやすくなりましたね」 と挨拶しますが、「爽快ですね!」 とは言う人はいないでしょう。

 

 

紺色で☓をした日は絶対湿度は15g/kgAD以下なので一見良さそうですが、爽快からはほど遠く 「ジットリ冷たい」 といった感じになります。

絶対湿度は小さくても、相対湿度がほぼ100%だからです。

ようするに、空気は湿気で充満にしていて、人体から出た蒸気を吸ってくれないからです。

その点、24日と25日は、 「爽やか!」「爽快!」「生き返る!」 という体感になります。

 

 

ちなみに、夏の湿度は、低ければ低いほうが良いというほど単純なものでもありません。高温低湿度は砂漠のように刺々しい暑さになります。

絶対湿度が16g/Kgなら良いというわけでもないのです。

要するに、人体からの放熱の速度が自然に、緩やかにできる環境に快適性を感じるわけです。

 

1.周壁温度

2.空気の温度と湿度

3.そよ風

4.チラチラと当たる木漏れ日

5.プルメリアの香り

 

これらの要素を好みのブレンドにして味わえる、特別な建築空間を創ればよいわけです。

 

 

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