一見、「道路交通法」と「防音マンション」は関連がないように思えます。しかし、社会の秩序や安全、そして快適な生活環境を守るために設けられたこの法律の精神からは、防音マンションへのヒントが数多く得られます。
1. 道路交通法から得るヒント

一般道では制限速度が60kmまでなのに、なぜ高速道路なら時速100㎞までOKなのでしょうか?
それは、高速道路は高架になっていて歩行者はいないし、横道から車が飛び出すこともないからです。つまり高速道路は安全につくられているのです。
これをマンションに当てはめると、防音性能がどれだけしっかりしているかということが基準になります。
たとえば、あるマンションで100dbの音を出してもお隣の部屋で聞こえないとしたら、そのマンションの制限速度、いえ制限音圧は100dbということです。
「車にはスピードメーターがついてるけど、音の場合はどうするのだ?」という質問にお答えします。
スマホの騒音測定アプリで自分の出している音の大きさを測れます。
デシベルメーター騒音計/AGI Applicationsというアプリがもっとも精度が高いとのことですが、それでも7dbも低く測定されるので、その分を控えてください。
たとえば制限音圧が100dbのマンションなら、アプリのメーターが90dbくらいに抑えて演奏するのが好ましいです。
高速道路を100㎞で走る時の疾走感、一般道を60㎞で走る時の快適な速度感は体験されていると思います。
でも、100dbとはどんなに大きな音か、60dbはどんな感じかは想像しづらいですよね。
《住まいの情報ナビ》さんがとても分かりやすい表をつくっておられますので、それをお借りして説明してきたいと思います。
90dbとはカラオケ店内の騒音、100dbとは電車通過時のガード下。とてつもなくやかましく、友達との会話がかき消されて聞こえない状態です。
逆に、10dbは雪の降る音だそうです。「しんしんと雪が降る」という表現は知っておりますが実際にその音を私は聞いたことはありません。それもそのはず、人間は30db以下の音は聞こえない、というか気にならないのです。むしろその程度のざわめきがないと落ち着かないのです。それを暗騒音と言います。

音響実験用の無響室(完全防音で、しかも音の反射が全くない部屋)に入ると、自分の心臓の音や血流音がきこえてきて気分が悪くなるそうです。
ちなみに都会のお昼間は特にやかましいと思わない時でも暗騒音は50dbくらいあります。
夜の暗騒音は30db程度であり、お隣や上下階から聞こえてくる音がそれ以下なら安眠できます。
3.コンクリート造のマンションの現実
一般的に、コンクリート造のマンションは静かだと思っている人が多く、お部屋探しサイトでも、①コンクリート造 ②鉄骨造 ③木造というランク付けになっています。でも実は、騒音トラブルがいちばん多いのはコンクリート造のマンションなんだそうです。(京都№1の入居者管理会社の社長に教えていただきました)
なぜなら、「静かに暮らせるなら、家賃が多少高くてもいいよね」と、コンクリート造のマンションを選ぶ人が多いからです。
逆に木造は音がダダ漏れだとわかったうえで入居しているので、争いが発生しにくいというワケです。
一般のコンクリート造のマンションの防音性能はDr-30dbくらいしかありません。
上の表をご覧ください。トイレを流す音やテレビの音までは聞こえてきませんが、赤ちゃんの泣き声や、子供が騒ぐ声は聞こえてきます。
どうでしょう? あなたの体験と、おおむね合っているでしょうか?
自分が被害者だと思うAさんの言い分 ⇒「コンクリート造のマンションは静かだと思って入居したのに・・・
赤ちゃんの泣き声が聞こえてくるんです」
自分は加害者だと思わないBさんの言い分 ⇒「コンクリート造のマンションは、防音性が高いから、子供をのびのび育てられると
思って入居したんです」
まあまあお二人さん、落ち着いてください。Aさんは被害者かもしれませんが、加害者はBさんではありませんよ。
では、加害者は誰なのか?! はい、加害者は設計者と工事会社です。
設計者と工事会社は、少なくとも防音レベルがDr-50db以上のマンションを造る義務があると思います。
なぜなら、ふつうの人がふつうの生活ができないマンションは、使い物にならないからです。
4.建築基準法はどうなってるか
建築基準法では、界壁(マンションのお隣同士を仕切る壁)の防音性能は500Hzにて40dbとなっていますが、実際には守られていません。理由は完成時の遮音検査がないからです。
確認申請では、メーカーの認定遮音壁材(40db)を使用すると合格します。
ところが、メーカーの実験室は特殊なつくりになっていて、ものすごく高い性能がでるしかけになっているのです。
そう、自動車の燃費テストみたいなものです。自動車のカタログに載っている燃費ほどは走れないと皆が承知で、あてにしないので問題もおこりにくいのですが、マンションの防音性には皆が期待しているので、音漏れは大問題です。
毎日ストレスが溜まってついに爆発するか、鬱になることも考えられます。


Musik北参道の防音性能はDr-70dbです。 (環境スペース株式会社測定: 計量証明事業所登録 東京都知事第1307号)
これは、音源が100dbであっても、お隣の部屋で聞くと30dbまで下がることを意味します。つまりMusik北参道の防音室では100dbまで音を出してもお隣や上下階の人に迷惑をかけないということになります。
では、100dbの音とはどんな大きさでしょうか? あらためて騒音目安表をごらんください。

表のように、たいていの楽器はOKということになります。さすがにドラムは無理なので禁止して、電子ドラムをOKということにしました。なぜ電子ドラムはOKかというと、ボリュームで音をしぼれるからです。エレキギターも同じくです。
自分でいうのもなんですが、防音性能Dr-70dbはマンションとしては桁違いの超高性能です。
防音性能がこのレベルまで達していれば、マンションの生活ルールをつくって、住民にしっかり守ってもらえば何の問題も起こりません。
「同じ音でも大きく感じる人と、小さく感じる人がいますが、どうしましょう?」という問いには、きっぱり答えられます。

100㎞で高速道路を走っていて「とてつもなく早い!」と感じる人と、「いや、どってとこない、駆け足ていどだよ」という人がいることは分かっています。
でも、彼らがどう感じようと、100㎞をオーバーするとスピード違反になります。
「いや、私のスピードメーターでは98㎞だった」と言い張っても警察の正確な速度計が105㎞を示しておれば通用しません。それとおなじく、プロ用の騒音計、たとえばNL-43/リオン(25万円以上)など、計量法に合格している騒音計で測定して判定します。
6.今後のマンションはどう作るべきか
また同じような表で申し訳ありませんが、今一度ごらんください。

私は、マンションを新築するなら、防音性能Dr-50dbが適度と思います。
なぜなら、「ふつうの生活を気兼ねなくふつうにできるマンション」が必要だと思うからです。
楽器演奏者のためには、それに特化したMusik北参道のレベルのマンションをつくれば良いわけです。

ふつうの暮らしをのびのびできる、あたりまえのマンションは、80db制限のマンションなんです。
これなら、赤ちゃんが泣いても気をもむ必要はありませんし、幼稚園児までならいくら騒いでもらっても大丈夫です。
オッサンの野太い声やいびきも大丈夫です。
防音と似て異もの、それは子供が走り回る足音振動対策です。
それと子供が室内の壁にドッジボールを当てて遊ぶ壁振動対策です。
これについては、別のブログで詳しく説明したいと思います。