街に出かけて、昔に設計させていただいたビルの前を通りかかると懐かしく思います。
40年前に設計したビルももちろん現役です。
ご存知でしたか? コンクリートの強度はワインのように熟成されて、最強になるのは築75年ごろなんです。
でも、なかにはビルの表札が変っているものに出会います。どうしたんだろう?
ビルが売却されて所有者がかわったのですね。
自社ビルではたまにそんなことがおこります。厳しい経済環境で何十年も会社経営をつづけるのは至難の業ですね。
クライアントさんには気の毒ですが、そんなとき私の中で地味な誉の気持ちがわいてきます。
昔に設計させていただいたビルが新しいオーナーにそのまま使ってもらっている。
「だからどうなんだ?」と思われるかも知れませんが、これはあたりまえのことではないのです。

著名な建築家が設計して話題になったビルがわずか20~30年程度で解体されることがけっこうあるのです。
(左の画像の赤丸は新築してから解体されるまでの年数)
表向きの理由は《老朽化》ということになっていますが、建物はそんなにはやく老朽化しません。
ほんとうの理由はつぎの3つでしょう。
1.時代の流れについていけない
2.敷地の有効活用がなされていない
3.レンタブル費(家賃を稼げるフロアの比率)が低い
私は設計を始めて40年になりますが、解体されてしまったビルは1棟しかありません。
これが私の、地味な誉なんです。
さて、私たちが10年前に設計させていただいた賃貸マンションは、元気に活躍しているでしょうか?
私のかわいい子たちを振り回さないで
「新築してから10年、お陰様でずっと満室でやってこれました」とハレアカラ三宿のオーナー。

でも実は、いろいろあったようです。それを示すのが下記の賃貸掲載履歴です。(書き込みはあくまで私の推測です)

私はたまにクライアントと電話で近況連絡をしあいますが、そのとき私はとある斡旋業者の営業マンの言動を思い出しました。
お部屋さがしをしているひとを現地案内したが決めかねている、というシチュエーションです。そのとき営業マンがどう言うか?
「どうです? 大家さんに1万円ほど値切ってみましょうか? 難しいと思いますが、もし、大家さんがOKしてくれたら決めましょうね」
場所をかえて電話。 「もしもし大家さん? 今、入居したい人がいるんですが、他のお部屋と悩んでいらっしゃいます。
このお部屋のほうが気に入ってるんだけど、他のお部屋のほうが安いんですよう。どうでしょう? ここで釣りそこねたら、また1か月か2か月空室ですよ。そしたら30万円近い損失が出るわけです。1万円値引きして決めちゃうほうが得策じゃないですか?」
たいていに大家さんはこの古典的な手口にひっかかります。
いいえ、ハレアカラ三宿がこんなストーリーだったとは言いません。
ただ、不動産屋の営業マンは決めてナンボ、契約させてナンボの世界ですので、どうしてもこんな感じになってしまうんです。
AI予測家賃?

なんだこりゃ!? AI予測賃料?
なかなかイイ線ついてるじゃないか。なんでそんなことがわかるのだ?
もしかして、その物件をよく観察して、長所と短所をしっかり把握して、周囲の物件と比較してどのくらいの家賃だったら
入居してもらえるのかわかるのだろうか?
でもまてよ。
「築年数が1年古くなると、価格はいくら下がるか」 ⇐ 私はここが気に入らない。
ヴィンテージ物件は家賃がさがらないのだ!
とはいえ、《清水千弘氏の研究結果》とやらをぜひ拝見したいものだ。さっそくアマゾンで検索。


「おー! とうとう、ヴィンテージの重要性に気づいてくれたのか!」と暑くなる自分をおさえきれず買い求めた著書
(税込み¥4.620也)
震える手で、第3章 ヘドニック分析での属性識別とビンテージ評価 をめくる。読む、読み進める。
希少性やデザイン性、素材、製法など、時代を超えて価値があるものや、防音性・足音対策・自分の仕事を高く売れる「城効果」など、だいじなことが加味されていない。 ったく、物の価値をわかっていない! 残念極まりない。


本物のヴィンテージ、とは
ヴィンテージ:ワインの製造年を表す言葉が語源で、時代を経ても価値のあるもの。
希少性やデザイン性、素材、製法など、時代を超えて価値があるもの。
【性能面の例】 お隣で大声で話してもこちらには聞こえず、上の階で子供が走り回っても足音が響いてこない、
のびのび子育てマンション。防音だけでなく、音響パネルまでそなえたミュージシャンの館。
【企画力の例】 副業や企業家を応援し、その人の実力がより高く評価される(より多くのお金を産む)ように
力を授けるハイブリッド賃貸。
【デザイン例】 昭和の小学校の教室、教会、レトロ純喫茶・・・無垢のフローリング、塗り壁、石などで造られていて、
ビニルクロスやビニル床はない。木目模様であってもビニルはビニル。劣化あるのみ。

わずかなスペースもホームオフィスに

ユニットバスは陳腐化するが、手作りはビンテージ化する

ビニルクロスは貼り換えるしかないが、ペンキは塗り重ねることができる。角が丸くなってヴィンテージ化する
自己プロデュース、やるしかない!
3大サイト(SUMO・ホームズ・アットホーム)に頼ってばかりはいられない。
なぜなら彼らのテンプレートは入居者のアンケートから作ったもの。つまりあてにならない。
そしてなにより、《今までになかったもの》を紹介するページではないから。
こうなれば、スティーブジョブズのように、自分でプレゼンするしかないのだ!