ハウスメーカーでは音トラブルが無くならない理由     一級建築士が正直にお話しします


ハウスメーカーが防音に強くなれない理由を、客観的に、忖度なく、ご説明させてください。

そのためにはまず、ハウスメーカーの特徴を簡単にご紹介いたします。

ハウスメーカーの特徴と強み


工場でパネルを生産 ⇛ 精度が高い。生産効率が高い。コスト節減 

 現場で組み立てる ⇛ 工期短縮。経費節減 


ハウスメーカー 痛し、痒し


ハウスメーカーの強みを発揮するには、建物の軽量化が欠かせません 

⇛ その結果、地震に強いが、遮音に弱いという長所と短所が生まれます。

これは《質量則》によるものです。

そこで私が、ハウスメーカーに成り代わって弱点を克服する方法を考えてみました。 余計なことかもしれませんが・・・

① 質量則の克服


《質量則》とは、簡単に言うと「壁が重いほど、音を遮る性能が高くなる」という物理法則です。 

音は空気の《振動》です。

コンクリートなど重い材料は、この振動に耐える力が強いため音が当たっても揺れにくく、隣の部屋へ音を伝えにくくなります。

コンクリートの壁を分厚くすれば、さらに遮音性は高まります。かといって重くしすぎると地震に弱くなります。

これは、体重の大きなお相撲さんは強いけど、膝を悪くすることが多いのと似ています。

そこで、《軽くて、遮音力の優れた壁》が開発されました。壁を二重にして、その間に空気層をつくる方法です。

この方法だと、コンクリートの6分の1程度の重量で済みます。

《軽くて、遮音力の優れた壁》第一人者は、吉野石膏株式会社です。

同社は、遮音力の要求に応じて、一般クラス~ハイレベルな遮音壁まで開発しています。同時に《耐火性能》にも優れていて、住戸から住戸へ類焼を抑える壁として有名です。

 

また優れた実験室を備えており《遮音壁》の性能を正確に測定することができます。

           出典:吉野石膏株式会社のHP

②《音源室》と《受音室》の絶縁が肝


【吉野石膏㈱のHPより】

吉野石膏では、壁単体の性能を正確に測定するため、「音源室」「受音室」「試験体フレーム」の3構造体をそれぞれ基礎から絶縁した特殊構造とし、なおかつ互いに建築音響的にも絶縁した世界で初めての設計システムを導入しました。このシステムによって、《試験体そのものの遮音性能》を精度良く測定することが可能となりました。

 

上記によるとメーカーが公表しているのは《試験体そのものの遮音性能》であって、マンションの遮音性能ではないのです。

なぜなら吉野石膏の音響実験室は、戸建て住宅の状態を再現しているからです。

言い換えれば、マンションの隣家や上階からの騒音をカットするには基礎から絶縁した特殊構造が必須条件となるのです。 

            出典:吉野石膏株式会社のHP

③  絶縁を実現する方法


絶縁する方法はマトリョーシカ構造しかありません。

なぜなら、マンションのすべての住戸はつながっていて一体構造になっているからです。

 

もしそれぞれの住戸がが独立していて、サイコロを積み上げたみたいな状態だったら、地震の時にバラバラと崩れ落ちてしまうからです。

 

ですから、マンション全体としては一体構造であることはさけられないので、それぞれの住戸の中に、さらに独立した箱を作るしかないのです。

 

箱の中に箱を作る。私はそれをマトリョーシカ構造と呼んでいます。

これなら、吉野石膏㈱さんがいう《建築音響的に絶縁》することが可能です。

 

④ 実際の作り方


元々のコンクリート床の上に硬質GW96k25㎜2層+ ポリシート + ワイヤメッシュ

厚さ10㎝のコンクリートを打設(20㎡分で4.8トン): 浮床と呼ぶ

 


上にある天井は、第一次マトリョーシカ。木軸組は完全独立。吊りボルト無し

壁・天井:石膏ボード(12.5㎜)×5層 + 吸音材 ⇛ この上に音響反射板設置



浮床コンクリートが4.8トン。木造軸組み+石膏ボード(12.5㎜)×5層、そして音響板の重量は約5トン。締めて役10トン!!。


軽量であることが、高い耐震性を生む

左のお家に、10トンダンプを乗っけるとどうなるでしょう


⑤ 仮に、ハウスメーカーが実行したら


基礎・柱・梁を強化 ⇛ 重 量  化 ⇛ 現場作業の比率が増える

 ⇛ 生産性の低下 ⇛ 工期延長 ⇛ 経費増加 ⇛ 利益が減る


というわけで、ハウスメーカーには《防音と足音対策》がしっかりしたマンションは実現が難しいです。

とはいえ、ハウスメーカーには頭の良い技術者がいらっしゃって、涙ぐましい努力をなさっています。

そのひとつがシャーメゾン(SHADD50)  「コンクリート並みの足音対策!」と誇らしげです。

 

が、私に言わせればまだまだです。

コンクリートの床は丈夫で、イメージ的には足音対策にすぐれているように思いがちですが、まったくそんなことはありません。レモンにビタミンCが多く含まれていると思われがちなのと同じです。

私は40年前から鉄筋コンクリート造のマンションを設計してきて、コンクリート床の厚さ、小梁を入れる間隔などいろいろ試してきましたが、満足のいく足音対策は《浮床構造》以外にはありません。

同時に、満足のいく遮音対策は《マトリョーシカ構造》以外にはありません。

⑥ というわけで、、


ハウスメーカーには、遮音性能や足音対策に優れたマンションが作れない、というワケではありませんが、

そんなことをしたら、ハウスメーカーとしての立ち位置がなくなってしまうのです。