勘違い1:中途半端な防音性能で音楽専門マンションと謳う
「誰にも気を遣わず音楽をやれたら良いなー」と考える人は多そうですが、音楽家の数は思いのほか少ないようです。
数年前、京都の芸術大の近くで音楽家専用の防音マンションができましたが、満室にならずに困っているという話を聞きました。入居斡旋会社に事情を聴くと「防音といっても完ぺきではないだろうから、音楽をやらない人には迷惑でしかない」ということでした。
たぶん「音楽をやる人同士なら、多少音漏れがあってもお互い様の精神で、大丈夫だろう」という発想でのスターでしょう。
ところが、音楽をやる人の母数が小さかった。
逆に言えば、音楽をやる人以外はすべて逃してしまう、という機会損失が敗因でしょう。
《防音マンション》はスペックを示さないと意味がありません。たとえば、高速道路にも速度制限がありますよね。
100キロ制限とか80キロ制限とか。
一般の道路と比べればずいぶん早く走れるけど、無制限ではない。だから安全を保てるわけです。
それと同じように、100db制限とか80db制限とか、そのマンションの防音性能を示して、入居者を募集すればよいのです。
ちなみに、100dbならどんな楽器が演奏できるか、90dbならどうか、80dbならどうか・・・目安になる表をつくりましたのでご覧ください。
防音スペックに見合った人を募集して、ルールに従って生活していただければ、何も問題は起こりません。
そしてなにより、広く入居者を募集することができるので、マンション経営に有利です。
勘違い2:防音と足音対策を混同している
《防音》と《足音対策》はまったくベツモノです。
それを混同して、防音だけやって足音対策をしない人がいるようですが、先にやるべきは《足音対策》です。
子供が走るとコンクリートの床に衝撃を与えます。
幼稚園の年長さん(体重約20キロ)が走る衝撃と、80キロの大人が踵でドスドスと歩くのとはほぼ同じ衝撃が生じます。
コンクリートの床にいったん衝撃を与えてしまうと止まらず、建物中どこまでも伝わっていきます。
そうならないためには、《浮床構造》にしないといけません。
《浮床構造》とは、建物本体のコンクリート床の上に柔らかい緩衝材をおいて、そのうえに第二のコンクリート床をつくるサンドイッチ構造です。
第二のコンクリート床が受けた衝撃は緩衝材に吸収されるので、建物本体のコンクリート床には振動がほぼ伝わりません。
もし、《浮床構造》をつくらずに、《防音》だけを施そうとしたら、どうなるでしょう。
少し専門的になりますが、「防音壁を建物にどのようにして取り付けるか」が問題になります。
ふつうに考えると、防音壁の周囲を建物本体のコンクリートにネジでとめることになりますが、ネジでとめると建物本体のコンクリートに防音壁の振動が伝わります。いったん伝わった振動は、ほぼ減衰することなくマンションのすべての住戸に伝わります。これでは防音壁の意味がありません。
なので、《浮床構造》と《防音室》はセットで効果を発揮するのです。
勘違い3:防音マンションだから生活ルールは不要?
「24時間、楽器演奏OK!」とうたっている防音マンションがありますが、それはどうかと思います。
高性能な防音マンションであっても、ルール作りは必要です。
「相手の気持ちになって・・・常識的に生活しましょうね」ではダメです。具体性がありません。
「音量制限〇〇dbまで」と客観的に数字で示すことが必要です。
数値でしめさないと、「それほど大きな音を出していない」とか「相手が神経質すぎじゃねーの?」とか言い訳ができますが、
数値でしめしておけば、公平に冷静にジャッジできます。
そして、「23時から朝8時までは音楽禁止」など、時間制限も必要です。
このように防音マンション内での生活ルールをしっかり作れば、音楽専用ではなく、いろいろな人を募集することができます。
夜泣きする赤ちゃんがいる家族、ペットと住みたい人、ユーチューバー、都心で静かに生活したい人・・・
幅広く募集できるので、満室になりやすいです。
私は、個人的には、赤ちゃんや幼児がいるご家庭を応援したいです。
赤ちゃんが夜泣きしてもだいじょうぶ。 「お母さんお父さん、気を揉む必要ありませんよ!」
まとめ
① 音楽専用マンションにしない
② 防音だけでなく、足音対策もしっかり行う
③ 高性能な防音マンションであっても生活ルールはしっかり定める
弊社が設計した“Musik北参道”は、総戸数36戸の《防音×音響×足音対策》マンションで、入居者の約半数が音楽家です。
残りの約半数はいろいろな方で、「都会の喧騒を忘れる静けさ!」とレビューをいただいています。

