コラボが化学反応する瞬間


じつは私たちの企画は、クライアントや専門家とのコラボから生まれたものがけっこうあります。

「世の中はどんどん進化しているのに、なぜマンションの間取は50年前とかわらないのか?」といった素朴な疑問から、

「建築費が30年前とくらべて2倍になったのに、なぜ家賃は上げられないのか?」といった不満、

「どうせ建てるなら、競合相手が絶対に追従できないものを創りたい!」という切実な要望までさまざまな意見が寄せられます。

 

クライアントに言われるまでもなく、私たちはすでにその解決策を用意していますが、それが実際の形に昇華するためにはディスカッションが必要です。今回のブログではその一例をごらんにいれたいと思います。

メゾン泰雲堂


京都市の中心地にある長屋の一軒を切り離してのプロジェクトでしたので、自ずと間口は小さく奥に長い土地でした。

しかも80㎡と小さい。さらに京都景観条例により3階以上の部分は道路から2m後退。

そこから階段とエレベーターを差し引くと22㎡のワンルームマンションが各階2戸しかできません、普通に考えると・・・。

ネットで検索してもらうと分かりますが、22㎡の既存のマンションは判で押したように同じ間取りです。

これはまさにレッドオーシャン。

22㎡でブルーオーシャンを創造するのが今回の任務です。

そこで異色のプロパティーマネージャーを招いてブレーンストーミングを行いました。

プロパティーマネージャーの佐藤氏は、こわいくらいの観察眼をもつ男。たとえば現地案内のとき、入居希望者の視線や表情を観察し、《本当は何を求めているのか?》 《何が入居契約の決め手になるのか》を分析します。そして入居望者本人ですら気づいていない潜在意識をくみ取るのだそうです。

彼は「アンケートはほぼ無意味」と断言します。

たとえば「欲しい設備」のアンケート。その欠陥は値札がついていないこと。無料ならあるにこしたことがない、に決まっている。 

 

安田:バスタブにお湯をはらず、シャワーだけで済ます人が多いと聞いてますが、新築のワンルームマンションでもバスタブがつ 

   いていることが多いのはなぜですか?

佐藤:はい、設計者に勇気がないからです

安田:なるほど、シャワーで行きましょう! ➡ 決定&握手

佐藤:パジャマや下着が散らかったベッドが丸見えなのは、

   宴会の後片づけをせずに朝を迎えたような、爽やかの

   真逆な気持ちになりますよね。20㎡程度のワンルーム

   マンションでこれを解決できないでしょうか?

 

安田:ベッドクリークはどうでしょう

佐藤:ベッドの入り江ですか?

安田:そうです。寝室をつくるのは難しいけど、Millennials

   みたいにはできますよ。

 

佐藤:それで行きましょう! ➡ 決定&ハグ

 

こんな具合にして生まれたのが、メゾン泰雲堂です。

ベッドクリークの前にカーテン引くと、宴会後の散らかったベッドは隠れます。

 


バスタブを排除したことによって、大人が本気でお料理できるキッチンができました。

結果はご覧の通り、満員御礼!                           👇 👇 👇


だから安田さんと仕事するのはおもしろいんですよ


手前味噌ですが、ちょっと私の誉れをタレさせてください。

 

かんたんな経緯はこうです。

JR代々木駅から徒歩4分の商業地。大手建設会社やディベロッパーが企画書をもって押し寄せてきました。

 

左の画像はクライアントがそれを私に見せてくれたときのメールです。

どいつもこいつも似たり寄ったりのプランで、パンダさんは壁々していたそうです。

 

【パンダさんからリクエスト】

  ・ぼくのストレス発散法は、ドラムをたたくこと

  ・いま建っている古いビルには音楽練習スタジオが入居し 

    ていて、アニメ「けいおん」の聖地なんだよ

  ・建てなおす限りは、絶対に競合の追従をさけたいんだ!

 

 

【私からの回答】

・ダントツの防音性能と足音対策をおこなう

  (Dr70・LH35・LL30)⇐ 規格外!

              👇👇👇

このように規格外な性能に仕上げるには綿密な計算が不可欠なのはもちろんですが、じつは計算できない部分もあるのです。

なぜ私たちが成功したかというと、2年前に高級ピアノスタジオKayacc Klavierを設計したときのノウハウがあったからです。

また、Kayacc Klavierの吉田社長のなにげないひとことが、素晴らしい音響を目指すきっかけになりました。

 

「ピアノだけで楽器は完成しない。部屋も楽器の一部なんだよね」

Musik北参道はマトリョーシカ構造を採用していますが、マトリョーシカは木造でつくりました。

理由は、アコースティックな楽器はどれも木製だからです。ピアノ、バイオリン、ギター、ベース・・・

下の写真で天井や壁がジグザグになっているのは、反響版です。

反響版の角度は6度で、フラッターエコーを防ぎます。

ですから楽器の音色がキラキラと輝きわたります。奏者はきっと、自分の演奏に酔いしれることでしょう

おかげさまで、Musik北参道は完成と同時に満室御礼。音楽家だけでなくユーチューバーさんも入居してくれました。

動画をとる時に雑音が入りにくいからです。

おかげさまで入居待ち状態になったので、2年後には家賃を1万円値上げさせてもらいました。

 

ついでに、といっては失礼ですが、アニメ「けいおん」の聖地をエントランスに再現しました。

見る人が見たらシビレルことでしょう。