建築業界ははどうやって利益を出しているか



そもそも建設業は儲からない


何億、何十億、何百億・・・

「建設業はさぞかし儲かるだろうなー」と、なんとなく思っているひとも多いのでは。

売上高こそ天文学的数字だが、実は建設業はあまり儲からないのです。

 

儲からない理由①:新規参入しやすい

儲からない理由②:基本的に単発である

儲からない理由③:リピーターはだんだん知恵をつけるので、儲からなくなる

 

以上、簡単に解説していきます。


儲からない理由①:新規参入しやすい


建築工事業を行おうためには建設業許可が必要であり、許可は「特定建設業」と「一般建設業」の2段階ある。(わずか2段階)

特定建設業のほうがランクは上で、資本力、技術資格取得者などクリアしないといけない条件が多く、ハードルが高い。

それにくらべて一般建設業は簡単である。

 

要するに建築会社は建築プロヂューサー(工事監理業)であり、型枠、鉄筋、鉄骨、大工、電気、給排水、ガス、空調など各種職人を雇用せず、すべて専門業者に外注する。建築会社の社員は現場監督だけなので社員数名で数億という売り上げが可能だ。

しかも、資本金はそれほどいらない。

なぜなら日本には古くから建築費の支払いの習わしがあって、契約時(総工事費の1/3)、上棟時(1/3)、完成時(1/3)を集金できる。たとえば総工費1億円の建物なら、契約の時、なにも工事していないのに3300万円も集金できる。

そして上棟(骨組みができた時)またもや3300万円も集金できるのだ。その合計は6600万円。

実は上棟までの原価合計は3300万円程度である。なので、建設業をはじめるのに資本金はいらない。

 

今工事している建物が上棟した時点で、新たな建物の契約がとれたとしたら、預金通帳には6600万円もの大金がのこる。

「この調子で順調に契約がとれたら、この6600万円って、ずっと俺の手元にのこるんじゃねーの?」と思えてくる、人もいる。

「1500万円のレクサスクーペLCなんか買っちゃおうかー♪♪」と思っても不思議でない。

これは昭和のノリだが、いまでもわりと楽観的な親方もいるのである。


儲からない理由②:基本的に単発である


一生に家を何軒も建てる人はまずいない。(ちなみに私は3軒建てて貧乏になった)

個人商店が立派になってビルを新築するケースも、単発である。

古い木造アパートを取り壊してマンションを新築する場合も、同じオーナーがそうそう何棟ものアパートを持っているわけではない。

要するに、リピーターは少ない。ほぼすべてカツオの一本釣り。

一匹としては大きいが、継続性がない。綱渡りというか、空中ブランコのほうがイメージしやすいかも。

仕事の気が薄いと、つい弱気になって1億円の建物を9000万円で請けたりする、単純な思考回路の親方もいるのが建築業界。

それは他の建築業者にも波及する。一旦そうなると、加速度的に経営が悪化する。

建築業は派手だが、実はそれほど儲からないという理由はここにある。


儲からない理由③:リピーターはだんだん知恵をつけるので、儲からなくなる


さきほど、「リピーターは少ない」といったが、いないわけではない。

ただ、儲けさせてくれないだけだ。

というのは、初めてビルを建てるときは、どんな材料で、どんな工程で建物ができあがっていくのか、まったく想像できない。

業界にどんな建築業者がいるのかも知らない。竹中工務店と清水建設は知っていても、まさか我家を建ててくれといいにくい。

また、建築費の相場もしらない。

 

こんな話をしていると、大昔の海外旅行を思い出した。もちろんネットなんてない時代。

パスポートも初めてなので書き方がわからず、手数料を払って日本交通公社にお願いした時代。

社会のテストで「三公社・五現業はなにか?」と問われたとき、日本交通公社と書いたのも懐かしい思い出・・・

そんな時代の海外旅行は団体パックツアーで、なんと添乗員付き。添乗員の旅費も飲食代も給料もこちらが全部負担する。

 

なぜ昔話をしたかというと、今、家を新築する人は、昭和時代に初めて海外旅行をする人に似ているから。

でも、昭和の旅行者もバカではなかった。

いちど海外旅行を経験すると、パスポート申請のしかた、空港での税関、身体検査、ホテルまで行くバスのこと、チェックイン、アウト、全部分かってくる。「もう、添乗員なんていらんよね。もったいない!」となる。

パック旅行でなく、自分で旅行をくみたてるようになる。

要するに、旅行屋さんも儲からなくなった。だからもう、街の旅行屋さんってなくなったでしょ。

 

これと同じ現象が起こるのだ、建築工事のリピーターさんに。

基本プランを描いて、数件の建築業者から見積もりを取って、安いところに決める。

建築業者の経営状態も、ネットである程度分かる。

特に、工場などを何棟も建てていくリピーターになると、どんどん知恵を集積して手ごわくなってくる。

それと反比例して建築業者は儲からなくなっていく。


大手建築会社の知恵 不発?


大手建築会社の立場になって考えてみると、「吹けば飛ぶような一般建設業が我々の畑を荒らしては困る」と言いたいだろう。

そのため?、建設業法において、一般建設業者が元請として受注できる建築費は1億円程度におさえれている。

その表向きの理由は、資本金の小さな一般建設業が大きな工事を元請したのち倒産したら下請けが可愛そうだから保護するため。

でも、私の穿った見方によると、ウヨウヨいる一般建設業者が安値で請負するのを取り締まるため。

現実はどうなっているのか自分で調べないと気が済まない質の私は、京都府庁の建築指導課へ行って訊ねてみた。

結果、「京都府庁建築指導課としては、一般建設業者が1億円以上の建築を受注していないか? 調査していない」とのこと。

「一般建設業が倒産して、下請けが不渡りを食って訴えた時、初めて調査に入る」のだそうだ。

要するに、建設業法はあまり機能していない。


儲かるのは、公共工事?


上記の理由で民間工事は儲からないが、公共工事なら儲かる可能性がある。

なぜなら、公共工事には誰でも自由に入札参加できないようになっているから。

売上や利益、資本力、技術力などの経営事項審査の総合点に基づいて、国土交通省がA~Dランクの4段階に区分される。

なので、場を荒らす新参者が乱入しにくい仕組みになっている。

 

また、公共工事の入札には「不調」といって、工事予算額以内でだれも受注してくれないときは、「親方日の丸?」よろしく、

工事費予算をアップしてくれることもある。

近年の例では、東京オリンピックや関西万博の予算だ。なんと、当初の約2倍!になってしまった。

いったいどれほど計画性がないのか? 小学生でももうちょっと考えるし、だいいち親が許さない。

でも、国家の主体ある日本国民はおとなしく、ブツブツ言うだけ・・・


もしこれが、民間事業だったら頓挫するしかない。

たとえば賃貸マンションの工事費が当初予算の2倍になったらどうだろう?

それにスライドして家賃を2倍にできるだろうか? 考える余地なし!

なので、民間工事はもうからないのだ。


サブスク的錬金術


建築工事費は数億円と巨額だが、一発屋なので長続きしない。

そこで考え出したのがサブスク的錬金術。

 

たとえば、エレベーターの実勢価格は9人乗りで1基1000万円程度であり、私は実際の利益率を知らないが、仮に20%としても200万円程度である。しかもエレベーターは長持ちする(60年くらいもつ)ので、車のように次から次へと売れるわけない。

そこで知恵を絞ったのが、メンテナンス契約。

毎月わずか2万円の利益だとしても、1年間に24万円。これが永遠に続くのである。

10年で240万円、30年で720万円、60年なら1440万円・・・このほうがよほど儲かる。

 

そういえば、私が使っているA3カラープリンターは、24.800円だったが、純正の交換インクは1セットなんと6.600円也!

しかも保証書には「純正インクを使用しない場合は保証しかねます」と書いてある。

成熟した世の中で生き抜くにはこの方法しかないわけで、建築業界も無い知恵を絞ってルールをつくった。国交省も了解した。 

 



 

・ビルの外装を3年ごとに点検する「特定建築物定期調査」 ➡ 真新しい建物でも3年ごとに足場を建てて点検する(足場代高額)

・分譲マンションの「管理計画認定制度」 ➡  修繕積立金はますます高くなる

賃貸マンションのサブリース : 建築会社とその仲間で、設計・施工・一括借り上げまですべて行い地主さんは何も 

                     しなくて良いのでラクだが事業の責任だけは取らなければならない

                     まさに、ゆりかごから墓場へ

 

要するに、全てのビルから永遠にお金を吸い上げようというワケ。

私たちは、維持管理費が少なくて済む建物を設計し、業界に脅かされてお金を巻き上げられないように理論武装していかないと生き残れない。(シロアリ退治屋、耐震改修屋も同様)