家賃が下らないマンションを、創る!

日本のマンションは、なぜ、築年数で評価される?


答え : どれも同じようなマンションだから

 

なぜ、日本のマンションは代わり映えしないのか?


●仮説1:設計者が、入居者をナメてるから?

賃貸マンションに入居する人は、所得が低いと思い込んでいたからです。

なるほど昔はそうだったかもしれませんが、今は断じてそうではありません。

 

今一度、入居者のことをよく知るをご覧ください。

もうひとつは、1970年以前は賃貸マンションが供給不足だったので、入居者はマンションを選ぶ権利がなかったからです。

なので、どんなお粗末な賃貸マンションをつくっても即満室になりました。

供給過剰になってもう半世紀近いのに、未だにその時の感覚を引きずっている年寄りが建築業界にいるのは恥ずかしいことです。

 

●仮説2:職人が、クレームを恐れるから?

無垢のフローリングは生き物であるがゆえ色や柄がまちまちで、温度や湿度の変化によって伸び縮みして反ったりスキマが空いたりします。

それが「味」であり「生きている証」なのですが、これにクレームをつける人が多いのも事実です。

そこでメーカーは、樹脂とボンドで固めた人工のフローリングを造りました。

伸び縮みも、反りもありませんが、もちろん木の風合も暖かさもありません。

壁を塗り仕上げにすると、職人の腕によって仕上がりが大きく違います。

塗り見本と出来あがりがかなり違うこともあります。これがクレームになるのです。

そこでメーカーはビニルクロスを発明しました。

コンクリートがヒビ割れても、壁材の継ぎ目に段差があってもビニルクロスで隠すことができます。

 

下の表が示すように、ビニルクロスはメンテナンス性と施工性が特に優れています。

言い換えると、工事する側にとって都合の良い商品ということになります。

現在使われている仕上げ材料はすべて、「工事しやすくて、クレームが出ないこと」を目的に開発されたものです。

これらと同じ理由で、もともとタイル貼りだったお風呂はFRP製のユニットバスに代わり、木製のドアはビニルシート仕上げに代わりました。

カタログと同じ仕上がりになるのでクレームはありませんが、味も素っ気もありません・・・。

しかも、出来上がった時がいちばん綺麗で、あとは劣化する一方です。

 

●仮説3:高度成長期に育った日本人は、「無難」を好む?

「減点法で考えるのは、高度成長期に育った人の特徴でないか?」と私は思うのです。

皆と同じテレビを見て、塾に通って、大学へ行って、就職して、結婚して子供を二人つくって、建売住宅を買って、そして退職金をもらう。

人生のスゴロクを何の疑問もなく一コマずつ進める。

「個性」より「無難」、トライして失敗するよりマニュアル通り動いた方が無難、つまり減点法で評価されたわけです。

その延長で、家の仕上がりも欠点がなく、均一な仕上がりを「良し」とするようになったのではないでしょうか。

 

なぜ、パリのアパルトマンはお洒落なのか?


●文化の先進国

パリを徘徊しながらカメラを向けると、不思議とこの町は「絵になる」。

どこが、という個別の場所ではなくて、ちょっとした路地や広場が、通りや橋が、みなお洒落で素敵なのだ。昔の建物や通りが残っているが、そこで営まれる今の暮らしは古い建物の雰囲気とうまく合っている。

時間の流れの上に重層的な作られた町がパリなのだ。

(都市計画コンサルタントで、写真家でもあるヘムレンさんの言葉より)

 

●パリの大改造

パリは「花の都」として世界中の人々から賞賛されてきましたが、百数十年前までは決して美しい都市ではありませんでした。

19世紀半ば頃のパリの写真を見ると、まるでスラム街のようです。

道の真中は必ず窪んで溝になっています。人々は日々この溝に排泄物や、汚水や生ごみなどを捨てており、その行き着く先のセーヌ川は、泥、動物の糞、廃棄物、汚物、腐敗物などでいっぱいになっていました。

立ち上がったのは皇帝ナポレオン3世でした。

彼は1853年にオスマン男爵をパリ県知事に任命して、大改造に着手させました。

街路を「移動のための手段」としてだけではなく、「歩く人が見て楽しむ存在」につくり変えたのです。← ここが凄い!

1859年に美観、日照、防災等の観点から街路幅員に応じて軒高を決めました。

ですから、大通りでも6階建て+ペントハウスの建物が綺麗に並んでします。

1960~70年代、オフィスやアパルトマンが供給不足になったので高さ制限は緩和され、59階建てのモンパルナスタワーなどが建設されましたが、高層ビルはパリの伝統的な都市景観が損なうとして、一転規制強化へと転じました。

ちなみに、京都市内中心部も以前は10階建てまで可能でしたが、平成19年の京都市景観条例によって5階建てに制限されました。さすがパリと姉妹都市ですね。

 

パリでは近年、オフィス不足に対応するため建築規制を緩和する必要にせまられましたが、守るべき場所は厳格に規制しつつ、歴史的景観への影響が少ない地区での大規模開発を許容しています。(以上、高崎経済大学地域政策学部地域政策学科准教授 大澤昭彦先生の研究より)

 

つまり、私たちが訪れるパリ市内(20行政区)内は建築規制をし、その外周にある環状道路の外側は開発を許可しているのです。

 

●パリのラヴァルモン

パリには、「ラヴァルモン」といって、最低10年に1度、外壁の掃除や磨きなおし、塗り替えを行うことが法律で決められています。費用についてはアパルトマンの家主さんが支払います。法律を守らなかった場合は、最高3750ユーロの罰金が科せられることもあるそうです。

ラヴァルモンの目的は、パリの美しい景観を守ること。そして定期的に外壁を修復することで大掛かりな工事を避けることができ、建物の価値を守ることにもつながります。

またパリ市は近年、ラヴァルモンの工事に伴って、遮熱効果の高い塗装を選んだり、暖房システムの見直しを同時に行うことも推奨。“Copropriétés : Objectif Climat ! (共同所有:気候目標)”と題した省エネ対策を発表して、専門家によるアドバイスのほか、調査費や改修工事の費用の一部を補助する政策などを打ち出しています。

日本のマンションでも建物の安全性や美観を維持するために大規模修繕が行われますが、マンション単体ではなく地域全体で美観を考慮したうえで行うようになれば、街全体の魅力が増し、ひいてはマンション自体の価値が高まる、なんてことにつながるかもしれません。

(パリ在住のフリーライター三富 千秋さんの取材記事より)

 

なぜ、パリの話をしたの?


日本では脈略がない規制緩和が行われた結果、まだまだ使える建物が壊されて、建て替えられているケースが多々あります。代表的なのは赤坂プリンスホテルです。新築されてわずか30年しか建っていないのに取り壊されました。

その主な原因が規制緩和です。

敷地の広さは全然変わっていないのに、以前より2倍もの大きさの建物が建てられるようになったので取り壊すことになったのです。

「先のことは知らん!」的な行政をしていると建物を使い捨てになり大変な損失です。

ちゃんと手をかけて建物を育てていけば、その建物はだんだん味わい深いものに成長しいきます。

パリは無秩序な規制緩和をせず、元々ある建物に手を入れて育てていくので、どんどん趣を増していき「古い建物ほど値打ちがあるのだ」という常識が育っていくのです。

さすがパリは文化の先進国ですね。

日本もパリに習って、真の豊かさを得たいものです。

 

日本人もそろそろ、文化の先進国入り


高度成長時代を終え、失われた20年間を体験しているうちに、日本人も「幸せとは何か?」を考えるようになってきたようです。

生き方にも色々ある。働き方にも色々ある。

自分たちが大切にするのは何か? 自分たちのかけがえのない時間をどう使うか・・・

このように考える人が増えてきました。それは主に平成生まれの人のようです。

彼らはヴィンテージ物に新鮮さを感じ、決まりきった既成品を嫌い、DIYで自分流にカスタマイズすることに価値を覚えるようです。

それはとても良いことですね!やっと本当の文化が芽生えそうです。

 

その仕上がりは、高度成長期に育った世代が好むものと真逆です。

ひとことで言うと、工場大量生産された既成品を嫌います。

ビニルクロスを嫌い、自分で壁や天井を塗装します。

システムキッチンのテカテカの扉の上からヴィンテージ塗料を塗ります。

木目を印刷された均一なフロアより、足場板の荒々しい感触を好みます。

 

ですから私は、新築の賃貸マンションにできるかぎり工場生産品を使わないように心がけています。本当は一切使いたくないのですが、一からすべてを製作すると高くつくので、工場生産品の良い所(安い、狂いがない)を活かして、一手間掛けて手作り感を出していきます。

 

ところが、頭で考えているだけでは職人さんはついてきません。職人さんはいままでの依頼主(高度成長期に育った人)の価値観を引きずっていますから「均一で掃除が楽な仕上がりを望まれている」と思い込んでいます。

 

そこで私たちMac研究所のスタッフは、自らDIYして見本をつくり「こんなふうに手作り感タップリに仕上げてください」と職人さんにお願いしています。

 

新築工事の完成はゴールではなく、スタート


これからは、建物を所有する人も借りる人も、バブル時代を体験していない世代の人がメインになってきます。ということは、従来のような均一で表面的な仕上がりではなく「自然な仕上がり」「味わいのある仕上がり」を求める人が増えるはずです。

ようやく日本も、文化の先進国入りですね!

 

建物は完成した時がゴールではなく、スタートです。

従来のようにビニル製品を使った仕上げは、新築の時が一番美しく、あとは色褪せていくしかありません。

ですから「築何年?」と聞かれて10年と答えると、「もう古いね」という反応しか得られないのです。

そうならないために、ちゃんとした仕上げにしておきましょう。

ちゃんとした仕上げの条件は、つぎの3つです。

 

1.無垢(表面だけでなく、中身まで同じもの)を使う

2.もどきの材料(ビニルに印刷したもの)は使わない

3.めくらない(塗り重ねる)

 

手をかけて可愛いがってやれば、歳月とともに風合いを増してくれます。

建物が年を取るのが楽しみになりますね!

 

 

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